金中、
、一ツははねあれども
雪蛆(せつじよ)の図(づ)
此虫夜中は
雪中に
凍死(こをりしゝ)たるが
ごとく
日光を得(う)れば
たちまち
自在をなす
又奇(き)とすべし
色蒼(くろ)し
・字書(じしょ): 本文では「書」の字は、
書は、昼の旧字の「晝」から最後の「一」の字を削った文字なので、
「昼」の最後の「一」の字を削って、書とするのか。
・[虫旦](だつ): 本文では、(たつ)「た」濁点なし。
[虫旦]は、
・蘇(よみがえる)也。: 本文では、(よみかえる)「か」濁点なし。
・腐らず: 本文では、腐らす「す」濁点なし。
・市中原野(しちゅうげんや): 本文では、(しちゅうけんや)「け」濁点なし。
・唐土(もろこし)の書(しょ): 本文では「書」の字は、先異字。
参照リンク:
私の北越雪譜 雪中(せっちゅう)の虫
単純翻刻
○雪中の虫(むし)
唐土蜀(もろこししよく)の峨眉山(がびさん)には夏も積雪(つもりたるゆき)あり其雪の中(なか)に雪蛆(せつじよ)といふ虫ある事山海経(さんがいきやう)に見えたり [唐土(もろこし)の書] 此説(せつ)空(むなし)からず越後の雪中にも雪蛆(せつじよ)あり此虫早春の頃より雪中に生(しやう)じ雪消終(きえをはれ)ば虫も消終(きえをは)る始終(ししゆう)の死生(しせい)を雪と同(おなじ)うす字[書](じしよ)を按(あんずる)に蛆(じよ)は腐中(ふちゆう)の蝿(はへ)とあれば所謂(いはゆる)蛆蝿(うじばへ)也[虫旦](たつ)は蠆(たい)の類人を螫(さす)とあれば蜂(はち)の類(るゐ)也雪中の虫(むし)は蛆(じよ)の字(じ)に从(したが)ふべししかれば雪蛆(せつじよ)は雪中の蛆蝿(うじばへ)也木火土金水(もくくわどごんすゐ)の五行中皆虫を生(しやう)ず木の虫土の虫水の虫は常(つね)に見る所めづらしからず蝿(はへ)は灰(はひ)より生(しやう)ず灰は火の燼末(もえたこな)也しかれば蝿は火の虫也蝿(はへ)を殺(ころ)して形(かたち)あるもの灰中(はひのなか)におけば蘇(よみかへる)也又虱(しらみ)は人の熱(ねつ)より生(しやう)ず熱(ねつ)は火也火より生たる虫ゆゑに蝿(はへ)も虱(しらみ)も共(とも)に暖(あたゝか)なるをこのむ金中(かねのなか)の虫は肉眼(ひとのめ)におよばざる冥塵(ほこり)のごとき虫ゆゑに人これをしらずおよそ銅銕(どうてつ)の腐(くさる)はじめは虫を生(しやう)ず虫の生じたる所(ところ)色(いろ)を変(へん)ずしば/\これを拭(ぬぐへ)ば虫をころすゆゑ其所腐(そのところくさら)す錆(さびる)は腐(くさる)の始(はじめ)錆(さび)の中かならず虫あり肉眼(にくがん)におよばざるゆゑ人しらざる也 [蘭人の説也] 金中猶(なほ)虫(むし)あり雪中虫無(なから)んやしかれども常をなさゞれば奇(き)とし妙(めう)として唐土(もろこし)の[書](しよ)にも記(しる)せり我越後の雪蛆(せつじよ)はちひさき事蚊(か)の如(ごと)し此虫は二種(しゆ)あり一ツは翼(はね)ありて飛行(とびあるき)一ツははねあれども蔵(おさめ)て蚑行(はひありく)共に足六ツあり色は蝿(はへ)に似(に)て淡(うす)く [一は黒し] 其居(を)る所は市中原野(しちゆうけんや)蚊(か)におなじしかれども人を螫(さす)むしにはあらず験微鏡(むしめがね)にて視(み)たる所をこゝに図(づ)して物産家(ぶつさんか)の説を俟(ま)つ
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