冬の雪は
春は雪凍りて
註:
・縋(すかり) (すがり)
「ヘルン文庫」「早稲田大学」の初版では「すがり」濁点あり。
「国会図書館」「信州大学」の改訂版では「すかり」濁点なし。
・歎難(かんなん) 「歎」の字はそのまま。
「ヘルン文庫」「早稲田大学」「国会図書館」「信州大学」全て「歎」があてられている。
岩波文庫のみ「艱難」と校訂されている。
・歎難(かんなん)也
岩波文庫のみ「也」が「なり」と校訂されている。
駅中積雪之図(えきちゆうゆきのつもりたるづ)
①人家(じんか)の雪を掘(ほ)る事本文にいへるがごとし②雪をほりて洞(ほら)のごとくになし棚(たな)も台(だい)もみな雪にて作り物を売るこれをさつやといふ③図中(つちゆう)山の如くなる所みな雪なり
参照リンク:
私の北越雪譜 雪道
単純翻刻
○雪道(みち)
冬の雪は脆(やはらか)なるゆゑ人の蹈固(ふみかため)たる跡(あと)をゆくはやすけれど往来(ゆきゝ)の旅人(たびゝと)一宿(しゆく)の夜大雪降ばふみかためたる一条(すぢ)の雪道雪に埋(うづま)り途(みち)をうしなふゆゑ郊原(のはら)にいたりては方位(はうがく)をわかちがたし此時は里人(さとひと)幾十人を傭(やと)ひ橇(かんじき)縋(すかり)にて道(みち)を蹈開(ふみひらか)せ跡(あと)に随(したがつ)て行(ゆく)也此費幾緡(ものいりいくさし)の銭を費(つひや)すゆゑ貧(とぼ)しき旅(たび)人は人の道(みち)をひらかすを待(まち)て空(むなし)く時を移(うつす)もあり健足(けんそく)の飛脚(ひきやく)といへども雪途(みち)を行(ゆく)は一日二三里に過(すぎ)ず橇(かんじき)にて足自在(あしじざい)ならず雪膝(ひざ)を越(こ)すゆゑ也これ冬の雪中一ツの歎難(かんなん)[ママ]也春は雪凍(こほり)て銕石(てつせき)のごとくなれば雪車(そり) [又雪舟(そり)の字をも用ふ] を以て重(おもき)を乗(の)す里人(りじん)は雪車に物をのせおのれものりて雪上を行(ゆく)事舟のごとくす雪中は牛馬の足立ざるゆゑすべて雪車(そり)を用ふ春の雪中重(おもき)を負(おは)しむる事牛馬(うしうま)に勝(まさ)る [雪車の制作(せいさく)別に記す形大小種ゝあり大なるを修羅(しゆら)といふ] 雪国の便利第(べんりだい)一の用具(ようぐ)也しかれども雪凍りたる時にあらざれば用ひがたしゆゑに里人雪舟途(そりみち)と唱(とな)ふ
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