雪竿といえば、越後の事として俳句にも見えたれど、此の国に於て高田の外、
註:
・三夏(さんか) 陰暦の四月・五月・六月にあたる、孟夏(もうか)[夏のはじめ]・仲夏(ちゅうか)[夏のなかば]・季夏(きか)[夏のすえ]の三つの総称。
・書翰(しょかん) 手紙のこと。
参照リンク:
私の北越雪譜 雪竿
単純翻刻
○雪竿(さを)
高田(たかた)御城(しろ)大手先の広場(ひろば)に木を方(かく)に削(けづ)り尺を記(しる)して建(たて)給ふ是を雪竿(さを)といふ長一丈也雪の深浅公税(しんせんこうぜい)に係(かゝ)るを以てなるべし高田の俳友(はいいう)楓石子(ふうせきし)よりの[書]翰(しよかん)に [天保五年の仲冬] 雪竿を見れば当地の雪此節(せつ)一丈に余(あま)れりといひ来(きた)れり雪竿といへば越後の事(こと)として俳句(はいく)にも見えたれど此国に於て高田の外无用(むよう)の雪竿(さを)を建(たつ)る処(ところ)昔はしらず今はなし風雅(ふうが)をもつて我国に遊(あそ)ぶ人雪中を避(さけ)て三夏(か)の頃(ころ)此地を踏(ふむ)ゆゑ越路(こしぢ)の雪をしらず然(しか)るに越路(こしぢ)の雪を言(こと)の葉(は)に作意(つくる)ゆゑたがふ事ありて我国の心には笑(わら)ふべきが多(おほ)し
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