凡そ物を視るに眼力の限りありて其の
下の図は天保三年
愚、按ずるに、
気中に
註:
長数の「長」は、偶数のこと。「丁」
半数の「半」は、奇数のこと。「半」
陰陽では、偶数は「陰」、奇数は「陽」
六出(りくしゅつ)とは、雪の結晶を花に見立て、六弁あること。
六は、偶数なので「陰」
験微鏡(むしめがね)を以て雪状(ゆきのかたち)を審(つまびらか)に視(み)たる図
此図は雪花図説の高撰中に在る所五十五品の内を謄写(すきうつ)す
是則(すなわち)江戸の雪也万里をへだてたる紅毛(おらんだ)の雪もこれに同じき物ある事高撰中に詳(つまびらか)也以て天の无量(むりやう)なるを知るべし
世に雪輪といふは是なり
参照リンク:
私の北越雪譜 雪の形
単純翻刻
○雪の形
凡(およそ)物を視(み)るに眼力(がんりき)の限(かぎ)りありて其外(そのほか)を視るべからずされば人の肉眼(にくがん)を以雪をみれば一片(ひとひら)の鵞毛(がまう)のごとくなれども数(す)十百片(へん)の雪花(ゆき)を併合(よせあわせ)て一片(へん)の鵞毛を為(なす)也是を験微鏡(むしめがね)に照(てら)し視(み)れば天造(てんざう)の細工したる雪の形状(かたち)奇々(きゝ)妙々なる事下に図(づ)するが如(ごと)し其形(そのかたち)の斉(ひとし)からざるはかの冷際(れいさい)に於て雪となる時冷際の気運(きうん)ひとしからざるゆゑ雪の形気(かたちき)に応(おう)じて同(おな)じからざる也しかれども肉眼(にくがん)のおよばざる至微物(こまかきもの)ゆゑ昨日(きのふ)の雪(ゆき)も今日(けふ)の雪も一望(ばう)の白糢糊(はくもこ)を為(なす)のみ下の図(づ)は天保三年 許鹿君(きよろくくん)の高撰雪花図説(かうせんせつくわづせつ)に在(あ)る所(ところ)雪花(せつくわ)五十五品(ひん)の内を謄写(すきうつし)にす雪六出(ゆきりくしゆつ)を為(なす) 御説(つせ)に曰(いはく)「凡(およそ)物(もの)方体(はうたい)は[四角なるをいふ]必(かならず)八を以て一を囲(かこ)み円体(ゑんたい)は[丸をいふ]六を以て一を囲(かこ)む定理(ぢやうり)中の定数(ぢやうすう)誣(しふ)べからず」云々雪を六(むつ)の花(はな)といふ事 御説(せつ)を以しるべし愚(ぐ)按(あんずる)に円(まろき)は天の正象(しやう)方(かく)は地の実位(じつゐ)也天地の気中に活動(はたらき)する万物悉(こと/゛\)く方円(はうゑん)の形(かたち)を失(うしな)はずその一を以いふべし人の体(からだ)方(かく)にして方(かく)ならず円(まろ)くして円からず是天地方円(はうゑん)の間(あひだ)に生育(そだつ)ゆゑに天地の象(かたち)をはなれざる事子の親に似(に)るに相同じ雪の六出(りくしゆつ)する所以(ゆゑん)は物(もの)の員(かず)長数(ちやうすう)は陰(いん)半数(はんすう)は陽(やう)也人の体(からだ)男は陽(やう)なるゆゑ九出(きうしゆつ)し[・頭・両耳・鼻・両手・両足・男根] 女は十出(しゆつ)す [男根なく両乳あり] 九は半(はん)の陽(やう)十は長の陰(いん)也しかれども陰陽和合して人を為(なす)ゆゑ男に無用の両乳(りやうちゝ)ありて女の陰にかたどり女に不用(ふよう)の陰舌(いんぜつ)ありて男にかたどる気中に活動万物(はたらくばんぶつ)此理(り)に漏(もる)る事なし雪は活物(いきたるもの)にあらざれども変(へん)ずる所(ところ)に活動(はたらき)の気あるゆゑに六出(りくしゆつ)したる形(かたち)の陰中(いんちゆう)或は陽(やう)に象(かたど)る円形(まろきかたち)を具(ぐ)したるもあり水は極陰(ごくいん)の物なれども一滴(ひとしづく)おとす時はかならず円形(ゑんけい)をなす落(おつ)るところに活(はたら)く萌(きざし)あるゆゑに陰にして陽の円(まろき)をうしなはざる也天地気中の機関定理定格(からくりぢやうりぢやうかく)ある事奇々妙々(きゝめう/\)愚筆(ぐひつ)に尽(つく)しがたし
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